【書評】「生命とは何か?」に科学的に迫る、誰もが読める生物の本
こんにちは、瀬倉弓です。
今回はたった今読み終えた本『WHAT IS LIFE? (ホワット・イズ・ライフ?) 生命とは何か』(ポール・ナース著、竹内薫訳)のレビューを書きたいと思います。
- ノーベル賞受賞者の手で、生物学をいきいきとおさらいできる本
- 情報として生命を捉える観点が面白い
- 生物学・科学の必要性と、他分野との協力の重要性
- 生物学を活かした技術のこれから
- 「生物とは何か?」の問いにも正面から答える
ノーベル賞受賞者の手で、生物学をいきいきとおさらいできる本
1〜5章「細胞」「遺伝子」「自然淘汰による進化」「化学としての生命」「情報としての生命」では、今に至るまでの生物学の歩みが生物学者の手で分かりやすく、いきいきと書かれています。
生物に興味のある中高生でも読めるんじゃないでしょうか。純粋に生物学の歩みが面白いし、テスト勉強にも役立ちそう。
高校で生物を専攻していないので推測になりますが、扱う内容は大学範囲に一歩踏み込んだレベルという印象です。ですが分かりやすく整理されており、好奇心をそそられました。
情報として生命を捉える観点が面白い
5章は「生命がどう情報を処理しているか」という観点で書かれています。ちょっと私には説明が難しいので、引用します。
彼(注:シドニー・ブレナー)は、あまりにも多くの生物学者が、それが何を意味しているかを完全に理解しないまま、生物の化学反応を記録して説明することに時間をかけすぎていることを懸念した。データの洪水を有益な知識に変えるために大切なのは、「生物がどのように情報を処理しているか」を理解することだ。(p.147)
データを集めることは重要だが、それは、すべてがどのように連携して働いているかを理解するという、もっと困難だがやりがいのある目的への初めの一歩に過ぎない。(p.168)
この視点に触れたのが初めてで面白かったです。
p.186で触れられていたアラン・チューリングの反応拡散モデルも面白そうです。勉強してみたいですね。
生物学・科学の必要性と、他分野との協力の重要性
5章以降ででたびたび触れられています。協力により新たな発見が見出せるかも、というのは物理以外でも言われてることなんですね。化学者、物理学者はもちろん、哲学者や詩人などと生物学者の連携というのも、実現したらとても面白い発見がありそうです。
政治家(某前大統領とか)はじめ、文系、経済人の人でも科学を勉強し、尊重する重要性についても触れられています。
こういった話を読んだことない方にはぜひ6章を読んでいただきたいです。
生物学を活かした技術のこれから
遺伝子技術などについても触れられていました。例を挙げると、がんの新しい治療法、遺伝子編集、iPS細胞、合成生物学(遺伝子プログラムを根本から書き換えるなど)。
「生物とは何か?」の問いにも正面から答える
タイトルの通り、最終章でこの大きな問いにも正面から挑んでいます。内容はぜひ読んでご確認ください、ということで書かないでおきます。個人的には(生物は全然詳しくないのですが……)納得のいく定義でした。他の生物専門の方がどう感じるのか気になります。
おわりに
直感で手に取った本でしたがなかなか楽しめました。生物に興味ある人に年代問わず広く勧めたい本ですね。細部の理解を飛ばしたら1時間以内で読めたので、他分野に触れるちょっとした息抜きにもおすすめです。
最後までお読みいただきありがとうございました。