ノンバイナリーの独学の跡

独学と、Ace/Aroでノンバイナリーとしてのつぶやき

2021年10月のインプット記録

本23冊(うち漫画1冊。読み途中6冊)、舞台1作。映画などの映像作品は観なかった。〈再読〉〈読み途中〉がついていない本は、全て初めて手をつけて読み切ったものだ。

10/31時点、読みかけて凍結中の本は8冊だ。こちらも消化していきたい気持ちがある。どれも単に読む気力が尽きて止まっているだけからだ。本は読み切らなくてもいいという話は知っている。だが、やはり勿体なく思ってしまう。

+ 作家を目指して +

『三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾』 [著]近藤康太

ちょっとうまく書けたらと思う人へ、すぐに役立つテクニックを紹介した本、だった。最初は。

私もそんな淡い動機で手に取った。しかし読了後の今、この本は私を毎日1時間書いて2時間読む生活に向かわせている。毎日継続して2週間(10/31時点)経った。そんなつもりじゃなかったのに。筆者の書くことへの考えに感化されたのかもしれない。とはいえ、本序盤のテクニックはすぐに効く。文章がちょっとでもうまくなりたい人には、立ち読みしてみる価値があると思う。筆者の文章や滲み出る考え方が合うなら、充分買う価値があるだろう。

『必読書150』 [著]柄屋行人、浅田彰岡崎乾二郎奥泉光島田雅彦、絓秀実、渡部直己〈読み途中〉

人類の叡智、それらに触れていないことをどこか後ろめたく感じている人は、手に取ってみるといい。教養をつけるための本を日本の知識人たちが選んだブックリストだ。スタンダードなものになっているらしい。今現在で叡智に触れていないサルの私では判定しかねるが。上の『三行で撃つ』で紹介されていた。

以下4ジャンルは『三行で撃つ』に依った課題図書である。1から3は『必読書150』のブックリスト順に読んでいる。3ジャンルとも現在1冊目だ。全150冊に触れるまで、先は長い。

1. 日本文学の古典

浮雲』[作]二葉亭四迷岩波文庫)〈読み途中〉

漢文や古文には独特のリズム感、グルーブ感がある。この『浮雲』は日本における言文一致体の走りとなった作品だが、古文に似たグルーブ感がある。内容はやや通俗的だ。流れるように読める。130年も前の作品なのに。

『必読書150』によれば、ストーリーを自分のことのように読ませる文体がいかにして可能になったのか、読み取ってほしいとのこと。その工夫として今思いつくのは、呼びかけやためらいの発話をカタカナで写しとることと、地の文で収まりそうな小さいセリフ(「アイヨ「デスガ……「エ、エー……(原文ママ))を敢えて会話文で描写すること、だろうか。

2. 海外文学の古典

オデュッセイア (上)』[著]ホメロス[訳]松平千秋(岩波文庫)〈読み途中〉

スマホゲームFGOにも登場するオデュッセウスの物語。「スーパーマリオオデッセイ」のodysseyの語源だ。古文もそうだが、昔の文章はどれも1文が長いんだろうか。

3. 人文科学、社会科学

『饗宴』[著]プラトン [訳]久保勉 (岩波文庫)〈読み途中〉

紀元前にこんなにも自由な対話があったのか。社会科の授業でギリシャ哲学の偉大さは聞いていた。しかし実際に読んで、その議論の自由さとテーマの普遍性に驚いた。作中に登場するアリストファネスの「人間は原初、両性具有の球体であった」論は一見奇想天外に思える。しかし、人間の性質からのその推論には頷ける部分もある。へそから原初の人間の姿を思い浮かべる想像力は尊敬する。考えてみれば、2000年以上前の文章が今も残っていて、ギリシャから遠く離れた日本で700円で買えるのも人間の偉大なことだ。

4. 詩集

『愛の縫い目はここ』[著]最果タヒ〈再読〉

同じ日本語で、どうしてこんな風な文章を書けるのだろうか。最果タヒさんと同じ日本語が母語で幸運だったとさえ思った。得意な母語でこれらの詩を味わうことができるから。本の装丁も素晴らしい。

初めて読んだ時は大して味わえずに読み流してしまった。その結果「なにを指しているのかよく分からない」という感想を抱いた部分もあった。詩集を読む必要に駆られて再読するにあたり、思いつきで音読してみた。するとどうだ、詩の景色が立ち上がってくるではないか。1度目とは全く違う。ひとつひとつの言葉選び、その繋げ方、句読点の場所、改行位置、その全てに感激してしまった。

愛についての詩がほとんどだ。タイトル通り、愛をコンセプトに編んだ詩集なのだろう。まだ読んでいない最果さんの詩集がたくさん残っている。幸せだ。

『鬼と踊る』[著]三田三朗

現代短歌集だ。著者はとにかくお酒を止めて、ブラック企業も辞めて!と思いつつ読んだ。31字で鮮やかに情景を切り取る手腕に感服しながらも、人を笑わせるサラリーマン川柳のようなものと捉えていた。つまり、文学とは少し違うと。が、解説を読んで印象が一変した。なるほど、短歌の世界にはそうした歴史があって、この短歌集はそんな読み方ができるのか。その気付きのヒントを散りばめつつ、いくつか好きな歌を引用する。

屋上から刻みキャベツをばら撒けばわたしも反社会的勢力

死神から誘いが来ても今日はまだ「行けたら行く」と答えるだろう

人類は破滅すべきと息巻いた翌朝7時に出す資源ゴミ

以下は書きものの勉強とは別に、自由に読んだ本だ。

+ 人生は交渉だ! +

『おとしどころの見つけ方 世界一やさしい交渉学入門』[著]松浦正浩

その装丁に目がとまった。交渉と言うと大層に聞こえる。しかし本の中で、交渉とは「複数の人間が未来のことがらについて話し合い、協力して行動する取り決めをすること」だと定義されている。これなら私も、ほぼ毎日している。友達とお茶する日程を相談したり。バイトのシフトを相談したり。

個人的に面白く易しく、筆者ならではの想いが見える入門書が好きだ。(教養主義の衰えだとか言われそうだが、一旦置いてほしい。)この本では、はじめの漫画に松浦氏の主張が現れている。教師役の宇宙人のセリフ「地球人は交渉がヘタすぎる!このままでは外交どころではない!特にキミの国(注:日本)では交渉力不足でいろんな問題が起こっている!」だ。率直なこの叫びを読んで、買うことを決めた。

初めて学んだ分野で、内容を吸収しきれていない。折に触れて読み返そうと思う。

ジェンダー

ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた』[監修]佐藤文香[著]一橋大学社会学佐藤文香ゼミ生一同

ジェンダー学ゼミの大学生たちが、身近な人から向けられた疑問へ答えた本である。そのコンセプトゆえ、率直な質問も多い。例を挙げると「フェミニズムって危険な思想なんでしょ?」「男だって大変なのに、女がすぐハラスメントと騒ぐのって逆差別では?」。そのいずれにも丁寧に冷静に答えている様に好感が持てた。そこまでジェンダーに無理解なつもりはなくとも、論理的にこれらの質問に答えられないなら学ぶべき部分は多い。

個人的に最も興味を惹かれた部分は、コラム「ジェンダーを勉強するとつらくなる?」(p. 190)である。興味はあったジェンダー学を避けてきた理由は2つ。過激な思想なのでは、という不安。(少しでも「間違っている」人に噛み付くフェミニストの存在が一因だ。怒りの激しさと冷静な穏やかさを使い分ければ、日本におけるフェミニズムへの漠然とした恐怖感が減るのでは、と素朴に思う。)そして、ジェンダーを学ぶと、社会に溢れる抑圧に気が付いてしまって辛そうだ、という心配。このコラムでは後者の心配を解消するには至らなかった。しかし、ジェンダーを学んでつらくなっても、再び学ぶことへ戻ってきた人の存在を教えてくれた。私もジェンダー学を学んでみようと思う。

『お砂糖とスパイスと爆発的な何か 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門』[著]北村紗衣〈読み途中〉

ー ビジネス書 ー

『デッドライン決断術 ームダな仕事はネグれ!』[著]吉越浩一郎〈再読〉

書いて読む独学を始めて時間が足りなくなった。時間を効率良く使うヒントを探し、再読してみた。ほとんどは筆者の経験(それも出版された2009年当時の)と当時の政治状況の見解だが学ぶべき所はあった。

ー エッセイ ー

『女ふたり、暮らしています。』[著]キム・ハナ、ファン・ソヌ

女性2人猫4匹という家族で暮らしている2人のエッセイだ。家族といっても同性カップルではない。このふたりは、信頼できる友人として互いを同居相手に選び、家族として暮らしている。

現在、家族と言えば、男女の結婚を中心にした形態がほとんどだろう。だが私は、もっと多様な家族の在り方があっていいと思っている。恋愛関係でなくても、友人同士でも、恋愛関係を含む3人以上でも。当人たちが家族だと思うなら、結婚に関係なく家族としての権利を保障する制度を設けるべき、という立場だ。そう考える一方で、異性間の結婚以外の家族へ向けられる目線は厳しいだろう、とも思う。そんな現実の中で、私の想像するような家族関係の存在を知ることができて良かった。すこしだけ、息がしやすくなった。

所々から、著者たちの生きづらさを読み取れた。女性として、或いは性別に関係なく人間として、韓国で感じる生きづらさだ。それは日本とはまた少し違う。その違いも興味深かった。

こういった、従来と違う家族関係が主題のエッセイは他にもあるようだ。読んでみるつもりだ。

『フィールド言語学者、巣ごもる。』[著]吉岡乾

入門書というより言語学エッセイ。しかし言語学の世界の捉え方はかいつまめると思う。洒落の効いた文章が魅力だ。できる限り精確に、全ての言語を平等に扱おうとする姿勢も表れている。その研究者らしさに好感を持った。

『パリの国連で夢を食う。』[著]川内有緒

パリにある国連機関で働いた5年半の経験を中心としたエッセイだ。国連で働くことに漠然とした興味があったので手に取った。なぜか国連で働くことになった経緯、国連での、パリでの生活、そして国連を離れることにした経緯。場面場面での、筆者の自由な選択が興味深かった。 

ー 現代小説 ー

『旅する練習』[著]乗代雄介

穏やかな空気に包まれた作品だ。だが最後の1ページで文章全体の印象が変わる。読了してから読み返すとまた違う景色が見えてきそうだ。

ー 嗜好品 ー

『珈琲の表現』[著]蕪木祐介

丁寧に珈琲を淹れたい。気分に合わせて味を作りたい。そう思う人に向けて、珈琲の知識や理論、レシピを紹介した本だ。コーヒー関連の好きな本を、やっと見つけられた。装丁も文字組みも美しい。何より筆者の珈琲の捉え方に共感した。静かに珈琲を淹れ、味わう時間が好きな人にお薦めしたい。

『お茶のすすめ お気楽「茶道」ガイド』[著]川口澄子
『ワイン1年生』[著]小久保尊〈再読〉

2次元に親しみがある人にお薦めしたい。著者小久保尊さんの捉えるぶどう品種のキャラクターと、イラスト山田コロさんのキャラデザが噛み合っている。取りあえずキャラにすれば売れるんだろ、という投げやりさは一切無い。一目で性格を掴める、良質なキャラデザインである。これは解説さんがワインの品種にキャラクター性を鮮やかに感じているからだと思う。私も、このぶどうのキャラたちはすぐに覚えられた。呪文のようなワインのラベルを解読し、楽しみたいと思っている人に薦めたい本である。私のお気に入りキャラクターはソーヴィニヨン・ブランとシラー、カリニャン、シャルドネだ。

『先生、ワインはじめたいです!』[著]こいしゆうか[先生]杉山明日香

値段の割に内容が薄い印象はある。しかし『ワイン1年生』と違って、1000円台2000円台の安いワインに限った品種や産地での特徴が書かれている。ここを参照したく買うことにした。

ー 焼きもの ー

『やきものの教科書』[著]陶工房編集部(誠文堂新光社
『やきもの文様事典』[著]陶工房編集部(誠文堂新光社
『酒器を愛す』[著]島根国士

英文学者の方が40年かけて集めた逸品を紹介する本だ。装丁や作りに神経が行き届いている。英文学者が書いただけあって、足腰の強い印象を与える文章だ。読んでいて心地がいい。

『心の焼きもの 李朝  ー 朝鮮時代の陶磁ー』[監修]伊藤郁太郎[編]MOA美術館 ほか

この本はざっと読んだだけだ。

漫画

「ニセモノの錬金術師」[著]杉浦次郎

pixivで連載されていたWeb漫画。

『ブルーピリオド』1巻[著]山口つばさ

舞台

「ドンジュアン」主演 藤ヶ谷太輔

真彩希帆さんを応援している。宝塚退団後の初舞台ということで観に行った。

映像作品

なし。せめて月に1作品は見たい。